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復活! サブカルをメインに批評・考察・提案するブログです。

ネギまにおける幻想空間

ネタバレ注意!


今週号(297時間目)を読みました。
先週号を読み終わった時点では、映画・ビューティフル・ドリーマーのように幸せなループ展開を乗り越えるものと思っていました。
実際に乗り越えてはいるのですが、ループになる前からすでに乗り越えていたというのが実情でしょう。


先に書いておきますが、ジャック・ラカンというのは心理学者と同名で、千の顔を持つ英雄というのは、神話学者さんの、神話を構造的に分析した本の名前だったりします。余談ですがいい本です。


丁寧に描いて、話数を稼ごうと思えばいくらでも稼げる「幻想の超越」を、説明っぽいセリフであっという間に乗り越えたあたり、今回の話は確認だったのだと思います。
痛みを伴う泥臭い道をそれでも進む。という決意はすでにできているネギ。確かに、今回またぐだぐだと幸せな幻想にとらわれてしまったら、物語自体の説得力がなくなってしまうでしょう。


そもそも、ネギたちが幻想空間から脱出したのは今回が最初ではありません。
一度目は京都のとき。
二度目はラカンたちがフェイトの部下と戦ったとき。
三度目が今回です。


一度目のループ脱出で鍵となったのが他人の心を読むアーティファクト「いどのえにっき」であり、
自分の心と向き合い、すべてを受け入れる「闇の魔法」を習得するときの師匠キャラの名前がジャック・ラカンで、しかもラカンは気合一発(実際には魔法理論に従ったやり方)で(二度目の)ループ魔法を破壊。
三度目は、「闇の魔法」を習得し独自で発展させたネギによっていとも簡単に破られた。


偶然か、あるいは意図的なものかはわかりませんが、すくなくとも二度目以降からは連続した意味が読み取れます。
普通の成長物語、ビルドゥングスロマンではなく、そこから思想として一歩進むぞ、という気概が読み取れるのです。
このままネギが進めば、チャオの未来を呼ぶ=何らかの失敗がすでに決まっているという構造から見ても。
ネギまは今後、世代交代をするのか、それとも未来を変えるのか、わかりませんが……この二つなら後者かな。
つらい現実の中でそれでも成長する姿、というオチもありえますが……。


というか、普通の成長物語を書いても、最近の世間には受けが悪かったりします。
よほどうまく作れば、それで受けることはありますが(ジブリなど)、たいていは別の一味を求められます。
そういう意味で、もともとのラブコメという持ち味から進歩しているネギまは、このまま成長物語としても名作になってくれるのではないかと期待しています。
さらにヒットするのは厳しいかも……絵柄やラブコメ色気分が完全にオタク向けなので、一般層はそれでも近寄ってこないかも、と思います。
読めば面白いんだから、きっかけしだいでさらに爆発するんじゃないかなあとも思うんですけどね……はっ、映画化か!