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FGOにおける英霊キャラとそれ以外~完成系キャラと未完成系キャラ~

 この批評は、Fateシリーズ、特にFate/Grand Orderのネタバレを盛大に含むので注意!

 

 今回は、主にFGOの英霊キャラクターの特徴について考えていく。

 

 FGOの英霊キャラは、神話、歴史、または既存の物語上に元となった人物がいることが多く、名前が分かった時点でわかる人には背景情報がおおよそわかってしまう、登場した時点で(ガチャで引いた時点で)完成している、完成系キャラである。

 死後、英霊の座に招かれ、後に(主に分霊が)召喚されるという設定上からも、それは避けられないものである。

 

 それに対して英霊でないキャラ、つまり普通の創作上のキャラクターというものは、登場した時点では未完成系キャラであることが多い。読者にとって、物語を読み終えることで完成するのであって登場した時点では完成していないからだ。名前がわかっても、イメージはできても既存の神話・歴史的知識と照らし合わせることはできない。

 

 この2つの分類の中間に位置するキャラクターが、FGOのメインヒロインと思われるマシュ・キリエライトである。

 マシュは皆さんご存じの通り、サーヴァントとして召喚された英霊と融合したデミ・サーヴァントである。そしてどの英霊と融合したのかは途中まで明かされない。

 これは未完成系キャラと完成系キャラの融合ともとれる設定であり、物語上でも両方の利点を扱える、非常に秀逸な発明である。

 

 話を完成系キャラに戻そう。

 FGOでは、ガチャで表示される画面だけでも、英霊キャラ、つまり完成系キャラの名前とビジュアルがわかる。そしてそのビジュアルは情報量が多く、名前と相まって画面を見ただけで欲しくなるほどだ。

 情報量が多いということは作画カロリーが高いということではあるが、漫画やアニメとは違いこの手のゲームでは一度描いた立ち絵をある程度使いまわせる。一度描いてさえしまえば何とかなるというわけだ。流石に一枚では足りないが。

 これは昨今の、見る前に内容を知りたいという一部の風潮にも合っているし、特に見ただけで感想を言いやすい(=見ただけで欲しくなる)キャラクターデザインはオタク間のコミュニケーションツールとしても強力である。

 

 その一方で、完成系キャラは、名前を聞いただけで背景情報がわかってしまうことから、意外性を設定事項の中に入れることが一見難しい。

 しかし、FGOでは人物への解釈と、キャラの想いでそれをクリアーした。

 いくら背景情報が大まかにわかるとしても、娯楽創作物においては情報の取捨選択がある。その点で意外な取捨選択をすることができる。もっと言えば娯楽創作物は現実ではないため嘘(=創作)がまかり通るので、その点でも意外性は盛り込める。これが解釈による意外性だ。

 キャラの想いとは、完成系キャラ、つまり英霊キャラが生前などに抱いていた想いの吐露のことである。

 その想いは葛藤のこともある。

 読者に神話的・歴史的な知識があっても、想いまでは全てをわかることはないはずで、その点で創作の余地がある。そこに意外性を盛り込む、というわけだ。

 

 むろん英霊キャラであっても、プレイヤーが知らない人物であることもある。マイナーであればあるほどそれは成立しやすく、その点でシナリオ上の意外性を出すこともできよう。

 

 思うに、FGOでは、ゲーム内にガチャシステムがあり、物語上で正体を隠していてもおおよその場合ガチャで引かれた時点で名前を知られてしまうから、こういった仕組みの完成系キャラにせざるを得なかったのではないか。

 キャラの一部にはシナリオをクリアするまで名前の隠されている英霊キャラもいるのだが、全ての英霊キャラでそれをやるわけにはいかなかったのだろう。「またか……」と思われる、つまりワンパターンになってしまうからだ。

 

 ただしこの論はFGOでは成立するが、Fate/staynightではあまり成立しない部分もある。staynightでは真名を隠す理由とメリットがあるのと同時に実際に物語上でも隠されていて、物語が進むにつれてようやく英霊キャラの正体がわかるからである。

 

 これらの分析から得られる創作論を、私の目指すライトノベルにも適用できないものか。

 個人的には、できると思う。

 ライトノベルは絵を使いまわすことはないが、漫画やアニメと違い、描く枚数が少ない。一枚ごとの作画カロリーが上がっても、何とかまだ対応できるのではないか。

 さらに、表紙を見ただけで欲しくなるようなキャラクターデザインのビジュアルという考え方は、ガチャの画面に表示された名前とビジュアルを見ただけで欲しくなる仕組みと近いものがあると思う。

 同じではないが、応用はできるはずだ。

 

 

 ということで、私の既存の知識だけで批評を組み立ててみた。

 今後分析・研究を深め、もし新たな批評が書けそうであったら、また書きに来るだろう。

 それでは。