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DEARDROPSをプレイして、シナリオを批評する

ネタバレ注意!



OVERDRIVEのアダルトパソコンゲームDEARDROPSへの感想です。
全体的なクオリティは高く、書きなれている印象があります。
しかしそれだけに、気になる点が悪目立ちします。


まず、初めると、主人公の過去が少し語られます。
それはいいのですが、その後すぐに登場するのが主人公の幼馴染「かなで」でした。
そのまま話が進むわけですが……


DEARDROPSは、ここで一つ致命的な欠点を抱えてしまいます。
シナリオで言う「起承転結」のうち、起の機能を一つ無視してしまったからです。
起、つまり序盤では、全体の方向性が決まります。恋愛ゲームの類では、ここの描写でメインヒロインを決定できると言うことになります。
素直にプレイすると、序盤では、かなでがメインヒロインであるかのように映ります。
しかし、実際にプレイしてみると、途中参加の律穂がメインヒロインとして扱われています。
これでは、肩透かしを食らってしまって、感情的に納得しづらい。


律穂ルートにおいて、かなでは脇役です。恋敵にはなりますが、ほとんど自己主張せずに終わります。
要所で登場はしますが、いなくても話が回ります。
かなでが歌が巧いと示しておきながら、律穂シナリオではまったく活躍しないのがそれをさらに際立たせています。
こいつは何のためにいるの? と言う疑問が終止ついて回ります。


一方、かなでルートでは、かなでがメインヒロインを張ります。
何故、このルートをDEARDROPSにおけるメインルートでないと断じるかというと、それは描き方にあります。


このDEARDROPSというゲームは、基本的に一人称の語りで話が進むのですが、この一人称の対象が固定されていません。
つまり、ある場面ではスガショーの一人称ですが、他の場面ではかなでが一人称で進めたり、あるいは他のキャラが語ったりします。
もちろん、大部分がスガショーによる語りではあるのですが、かなでシナリオでは、まるで主人公が交代したかのようにかなでのドラマが増えると共に、かなでの一人称場面が増加します。
さらに、このかなでのドラマには、スガショーは途中まで大きく干渉しません。様子をうかがっているだけです。スガショーはバンド、かなでは一人でアイドルと、別々の道を歩いているので、どうにもかみ合わない。
そして、かなでのドラマが進行する間は、主人公がスガショーからかなでに交代してしまっています。これは一人称が誰かというだけの話ではありません。その後再びスガショーになったり戻ったりして、まとまりがありません。
また、OP動画や序盤のいろんな場面で、バンドが押し出されているのに、かなでシナリオではバンドがメインに出てきません。これもやはり、起とそれ以降が剥離しているために感じることでしょう。


まとめますと、かなでシナリオは、ドラマの分割によって、魅力を半減させてしまっていることになります。
一つの物語として整合性を放棄してしまっているため、DEARDROPSのメインルートとして認められません。


起でかなでだけを出してしまうのではなく、全員をチラチラと出すか、あるいはヒロインでない人間を出すかするべきだったでしょう。ワンクッション必要だった。
また、どうしてもあの導入にした上で律穂をメインに出したいなら、かなでと律穂のダブルヒロインでラブコメ分を取り入れればよかったのではないでしょうか。
漠然とした「面白さ」を作り出すことはできていますが、一本の物語としてはまとまりきっていない印象を受けます。


DEARDROPSは、エロゲの枠を守り抜こうとしたあまり、それに足を引っ張られた感があります。
あれほど、スガショーの物語として完結しない、りむ及び弥生ルートを付け加えてしまうくらいなら、二人のルートは最初から独立させておまけシナリオにした方が良かった気がします。
というのも、主人公の過去や何やらがほぼ無視されてしまうオチを迎える以上、かなでルートよりもなお、DEARDROPSのメインとしてふさわしくないからです。
バイオリンも何も乗り越えていないのに結婚だけするとか意味不明です。破滅が目に見えています。
それだったら、完全に切り離して、おまけにしてくれたほうがいいです。そういうものだと最初からわかるので。そうですね、本編で彼女らの過去か何かに触れるシナリオを通った時に、おまけシナリオが解放されるのはどうでしょうか。


twitterや他の宣伝でもシナリオの完成度をたびたび口にされていると言うことは、物語性でも売りたかったのではないかと考えたので、とりあえずそこに注目して批評させていただきました。
また書くかもしれませんが、ひとまず終わります。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。