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青春の疑似体験~ポケモンスカーレット感想~

 オーオーオオー♪

 オオオオオッオー♪

(ジム戦等のテラスタルする時に流れるあの合唱だと思ってくれ)

 

 というわけで、ポケモンスカーレットのストーリーをクリアしたので、感想をアップロードする。

 しかしプレイしながらメモを取らなかったので、主に記憶で組み立てていく。

 だから細部の感想の抜けはどうしても出てくる。ご了承のほどを。

 

 以下、ネタバレ注意のためプレイ済みの方のみ読んでみて欲しい。

 

その1 スターダスト☆ストリート

 

 謎の存在カシオペアに導かれ、不良のような集団のスター団を解散させるために各地のスター団のボスを倒していくストーリー。

 

 ポケモンはシリーズを通して「~~団」と言う悪役が登場することが多い。

 少なくともXYまでは悪役だったと記憶している(ルビサファのような部分的な相対化などはあるが)。

 だが、サンムーン以降は敵対していても、「裁かれるべき悪」としての描かれ方は少なくなっており、敗者の受け皿だったり、ちょっと過激だけど単なる応援団だったりする。

 そしてその「単なる悪役でない度合い」は作を追うごとに増していっており……今作での「スター団」は、第一印象こそ悪いものの、実際は悪ではなく「いじめられっ子の互助組織」として存在していることがストーリーの途中で明かされる。

 次回作での「~~団」は完全に主人公の味方になるのか、それとも初心にかえって悪役になるのか、あるいは完全な味方ではないものの、今作よりもさらに悪でない方向の存在になるのか、期待が膨らむ。

(そういえば、番外作品ではあるもののレジェンズアルセウスでは主人公自体がギンガ団の一員になるのだった)

 

 初代のロケット団からXYのフレア団までは主人公が冒険する上で障害となる悪役を引き受けていたのだと推察されるが、なんなら創作物としては日常系作品群のように、悪役がいなくても障害は存在できるし、または障害が無くても物語は成立できるのである。

 特に、冒険物語としてのポケモンは、明確な悪が無くても成立するし、無い場合を突き詰めて娯楽にするのも一つの方法だろう。

 

 スター団の「スター大作戦」によって逃げ出した、かつてオレンジアカデミーに在籍していたいじめっ子たちは本作には直接登場せず、回想などでわかるのみとなるが、もし今作に「裁かれるべき悪」が存在するとしたらこのいじめっ子たちであろう(すでに裁きは受けているようなものであるが)。

 そういう意味では、前作のポケモンソードシールドにおいてファンの間で想像された「ガラル地方に悪の団がいないのは、現チャンピオンのダンデによって滅ぼされたからではないか?」という仮説のように、「パルデア地方のアカデミーにおける「明確な悪」としてのいじめっ子たちは、いじめられっ子たちのスター団によるスター大作戦でいなくなった」という、こちらは仮説ではなく明確に語られた事実があるわけで、スカーレットが「明確な悪を裁く」旧来のポケモンシリーズと同じようなシナリオだった場合、スター団の面々、とりわけマジボスであるボタンのポジションが主人公だった可能性はある。

 

 スター団の面々には基本的に嫌な奴がおらず、互いが互いを思いやる友情と青春という宝物が描かれていた。

 

その2 レジェンドルート

 

 博士の母親と折り合いが悪いペパーという少年とともに、各地のひでんスパイスを入手するために、強力なヌシポケモンを倒していくストーリー。

 

 スパイスという言葉からは、パルデア地方のモデルがスペイン・ポルトガルと言うこともあり大航海時代にヨーロッパ人が香辛料を求めていたことを思い出させるが、あくまで想定されるネタ元であり、別の国へひでんスパイスを取りに行くような展開は一切ない。冒険はあくまでパルデア地方の中で行われる。

 

 何故ひでんスパイスが必要なのか? というような問いに対して、ペパーはマ……と言いかけたため、当初はてっきりママのためかと思ったが全く異なり、2つ目のひでんスパイスを入手した時にペパーの愛するポケモン「マフィティフ」のある場所で負った大怪我を治すためだとわかる。

 

 このルートでの思い出は、他のヌシポケモンをとばしてイダイナキバとの戦闘に入ってしまい、何度もポケモンを入れ替えたり回復したりしてギャラドスのとくせい「いかく」を使って相手の攻撃を下げたり、そうこうしている間にペパーのポケモンが結構イダイナキバの体力を削ってくれたりするなどして、レベル差があるにもかかわらず作戦勝ちしたことである。

 ポケモンシリーズでこういう体験をしたのは、レッツゴーピカチュウでのレベルを十分に上げていなかったのに挑んでしまったミュウツー戦で、ギャラドスにプラスパワーか何かを使いまくった上で悪タイプのわざ……かみつくもしくはかみくだくで倒したとき以来である。

 

 ペパーの第一印象は良いとは言えなかったのだが、一緒に冒険をしていくうちに、ポケモン想いの良いやつじゃん! となり、ここでは詳細を省くが「ザ・ホームウェイ」をクリアするころには完全に感情移入と言うか、大切なキャラの一人になっていた。

 シナリオの基礎に「アンチ(逆)から入れ」というものがあるが、もしかするとそういうことかもしれない。

 

 このレジェンドルートはペパーのマフィティフが完治することで終了となるが、ペパーの母親のオーリム博士からパルデアの大穴・エリアゼロへ来てほしいと連絡が入る。他のシナリオと合わせて3つのシナリオをクリアした後に、実際にエリアゼロへ足を踏み入れられるようになる。

 

その3 チャンピオンロード

 

 マジ ネモいな

 


 で、すませようかとも思ったがさすがにそれでは酷いのでもっと書いておく。

 

 他の2つのルートがしんみりしていたりするのに対して、このルートは明るいシナリオだ。それと言うのも本作のライバルに当たるネモという女の子が(主人公の前では)常に明るくバトルを楽しむ人物だからだろう。

 

 今作ではチャンピオンは一人ではなく、「チャンピオンランク」に属するトレーナーが複数いるという世界観になっている。

 これは私の持論だった「ポケモンは、プレーヤーがチャンピオンになるシナリオで絶対化される体験をした後に、通信対戦で負けたり勝ったりして相対化される体験をするゲームだ」という批評を乗り越えていく変化と取れる(さすがに批評が公式に届いてはいないだろうが……)。

 

 絶対化の要素がなくなったわけではないが、今までよりは相対化されているわけだ。

 

 前作までのポケモンを念頭に置くと、チャンピオンを目指すシナリオと並行して伝説のポケモンと絡めた悪の団等のサブのようなシナリオが並行して進んでいくというものが多かった。チャンピオンを目指すという点だけをみれば毎回同じだと言われてしまうかもしれないが、そこはそれ、王道と言うものはそういう物で、その中でどれだけ差別化できるかというところが勝負なのだ。そういう意味では、その伝説のポケモンや悪の団、またはその他の脅威などが差別化しやすい点だと言えるだろう。

 

 私の個人的に好きな作品であるサンムーン(およびウルトラサンムーン)は全体の雰囲気が最も冒険でなく観光に寄った作品だと思っていて、これは全体の雰囲気という点でも差別化されている。

 

 しかし今作は攻略の順番が自由な上記の3つのシナリオが用意された。

 これにより、チャンピオンを目指すシナリオ単体でも評価されてしまうことになった。

 今までの主な差別化要素の伝説ポケモンや悪の団と分けて見られるという、一見差別化しにくい構造になってしまっているが、最近の娯楽における正攻法の、キャラクターを重視するという解決策で差別化をクリアしている。

 それは、今までにないキャラクターを置くというものであり、そのキャラクターこそがネモである。

 

 ネモはバトルジャンキーであり、真剣勝負に負けても喜ぶほどだ。全力で戦って(戦えて)より強くなることが喜びのようだ。この点が実に誇張されており、SNSでもネタにされている。

 

 この点を考えると、この批評のその3において、「マジ ネモいな」で済ませようとしたのも、あながち間違いではなかったと言えよう。

 

その4 ザ・ホームウェイ

 

 衝撃のシナリオだった。もちろんいい意味でだ。

 

 ネモ・ボタン・ペパーと4人でエリアゼロを探索するのは単純に嬉しかった。それだけにクリア後に1人でいくのに寂しさを覚えたほどだ。

 何よりスターダスト☆ストリート、レジェンドルート、チャンピオンロードの3シナリオが全て伏線として機能し、総まとめのシナリオとして申し分ない展開を繰り広げる。

 素直に強く感動した。

 

 何故タイトルがザ・ホームウェイなのか? あのラストシーンから持ってきたのだろう。ペパーはかわいそうな境遇になってしまったが、友達、いや親友たちと一緒ならきっとやっていける。

 

 ポケモン金銀クリスタルにおけるマサキの発明タイムカプセルなどへの言及がなく、ひょっとしてそれよりも前の時代の話なのかとも思った。

 個人的な話になるが、オーリムAIがマサキの元へタイムスリップしてしまう二次創作を書こうかと思ったほどだ。

 

 DLCでは各タイトルにおける出てこなかった方の博士でありペパーの親が登場するのかな……などと想像を広げている。まあ、全く違う可能性も高いが。

 ともあれ、DLCでは未解決の謎(タイムパラドックス)や円盤のポケモンについて綺麗に解決してくれるのではと期待している。

 

その5 キャラクターのビジュアルについて

 

 こういうのも、一度やってみるのは良いことだ。

 だが、可愛いビジュアルに戻してほしい。

 

 主要なキャラクター達は魅力的だったと思うが、それでもどこか外したキャラデザにしてある気がする。

 モブ、つまり脇役のトレーナーたちはもっと露骨で、見ていて嬉しくなるようなキャラデザはほぼ無かったように思う。

 サンムーン、およびウルトラサンムーンまで、キャラクターがどんどん可愛くなっていくのを感じていたので喜んでいたのだが、剣盾以降、反対に舵を切ったように思える。

 なんというか、ざっくり言うと剣盾では「女性が可愛いというが男性はそうは思わない」キャラデザが増えた(特にモブ)。

 そして今作は、言ってしまえばいわゆるポリコレに配慮しすぎている感じがする。

 

 個人的には、ギリギリ不快ではないキャラデザを目指すのではなく、はっきり快いキャラデザを目指してほしい。

 一歩間違えればファンが離れるのではないかと思える危うさがある。

 

 可愛さはナンジャモがいればいいだろうというような。

(その割に全クリ後、ナンジャモと戦えないし……)

 

 いや、十分に面白さは感じるのだが……。

 ちぐはぐさを感じるのだ。

 ポケモンは一会社の一作品であり、この世界の道徳を体現する必要などない、ただの優れた娯楽でしかないことを思い出してほしい。

 

その6 ゲームシステムについて

 

 今までも段階的に対戦用ポケモンの育成が楽になっていたが、今作はかなり踏み込んで楽になったように思う。

 またそれによって、プレイヤーの行動が世界観に沿った行動に収まるようにもなった。

 どういうことか。

 

 それは、ゲーム内金銭がありさえすれば、テラスタイプと経験値以外はどうにでもなるという変化である。

 ファンが考案した金策ニンフィア等を育てれば、ゲーム内金銭に困ることは無くなるので、実質テラスタイプと経験値以外はどうにでもなる。

 

 きそポイントはマックスアップやタウリン等のえいようドリンクアイテムを買いそろえて使用することで最高まで上げられるし、個体値はぎんのおうかんが売っているのでレベルを50まで上げてから(これも以前は100レベルだったからずいぶん楽になった……)すごいとっくんをすればいい。

 性格による能力値の変化も、やはりゲーム内金銭で買える各種ミントをかがせればそれで済むようになった。

 

 えいようドリンクは前作でも購入できたし、それだけで最高まで上げられるようになったのも前作からであるが、ミントやおうかんの入手が大幅に容易になったのが大きい。

 なにせ以前はBPというお金とは別の通貨を手に入れなければならず、手に入れるためにはバトルタワー等で勝利を重ねる必要があった。

 だが、バトルタワーにおける戦闘は最初の内は楽であるものの、

 

・何連勝もする必要があり、めんどう

・そもそもある程度育成したポケモンを連れてこないと途中からは厳しくなる

 

 という仕様のため、育成するためには育成したポケモンが必要という、ある種矛盾のような(大変なだけで矛盾ではないが)仕組みになっており、通信対戦にかける情熱が高い人にとってはいいものの、初心者やエンジョイ勢へ通信対戦の裾野を広げるにあたっては適さないものとなっていた。

 

 また、性格厳選はかわらずのいしで固定できるためまだいいとしても、個体値については孵化厳選の結果として最良の個体を出すことが多い。あかいいとを持たせることによって効率は以前よりも上がっていたが、それでも何時間も費やしタマゴ孵化ばかりをして、最良でなかったその他数十匹のポケモンは逃がすか交換に出すかというのは、歴代ポケモンのストーリーで語られる世界観とはどこか違うように思う。

 

「つよいポケモン

 よわいポケモン

 そんなの ひとの かって

 ほんとうに つよい トレーナーなら

 すきなポケモン

 かてるように がんばるべき」

 

 というポケモン金銀の四天王カリンの有名すぎるセリフがあるが、私は通信対戦の魅力というよりはシナリオやゲーム性に感動したクチなので、今作での、「弱い(=対戦に向かない)個体でも、頑張れば(対戦に向いた)強い個体になれる」という仕様を支持する。

 思い入れという意味では、ポケモンの種類だけでなく、最初の一匹を最後まで使いたいとか、対戦でも使いたいとかいうのは自然にある欲求で、特に子供の頃にプレイした場合はそれが大きいのではないか。少なくとも私はそうだった。その願いを叶えたという点で非常に評価できる。

 私のプレイした範囲の初代妖怪ウォッチゲームボーイカラー時代のドラクエモンスターズではこれが不可能で、最初に味方にした妖怪はそんなに強くなく、また看板キャラのジバニャンを味方にしてもその後は他の妖怪を使わざるを得ず、がっかりしたことを覚えている。ドラクエモンスターズでは思い入れのあるモンスターの血を継いだモンスターで戦うことは不可能ではなかったが、やはり最初のスラぼうで全クリは厳しい。もっとも、昔のポケモンだってストーリーは最初の一匹とともにクリアできるものの、対戦で使うのは厳しいことが多かったのだが。

 

 話を元に戻せば、だいたい、製作者側も、プレイヤーに楽しんで欲しいのは孵化厳選ではなく対戦の方ではなかろうか、と思うのだ。

 

 残る課題はテラスタイプと経験値であるが、テラスタイプはやりこみ要素やレイドのモチベーションとして必要なテラピースの数を増やしたのだろう。しかし正直言って多すぎるように感じるので、DLCが出るならそこで入手しやすくするか、ばっさり必要な数を減らしてほしい。現実的なのは前者か。

 経験値はレイドをやっていればけいけんアメが沢山手に入るため、それほど気にならない。

 

 以前は楽しいミニゲームを挟むことでその結果で個体値を変化させる仕組みとかどうよと思っていたが、いざ厳選がほぼ不要になったポケモンをプレイしてみると、これで正しいと信じられる。いかにミニゲームの質が高くとも、早く育成したい人からしたら面倒なだけだろう。

 やはり最強は公式なのだ(でもキャラデザの路線は考え直してほしいが)。

 

 完全シンボルエンカウントになったことで、図鑑埋めのモチベーションが上がった。

 画面を眺めるだけで「あ! あれ持ってない!」ということに気が付きやすいからだ。

 

 また、完全シンボルエンカウントの仕様になったことで、確率は変わっていなくても色違いが出やすく感じるようになったのだろう。

 ランダムエンカウントがあったころは、遭遇するまで色違いかどうか分からなかった。しかしレジェンズアルセウスと今作では遭遇する前から目で見て判断できる。

 そして画面上には無数のポケモンが登場しているのだから、体感上の確率が一匹一匹遭遇する必要があるころよりもずいぶん上がったはずだ。

 さらに言えば、貴重なスパイスを使うことでかがやきパワーという、色違いと遭遇しやすくなるパワーを付与することができるので、もはやそれほど情熱がなくとも色違いを捕まえることができるようになった。

 

 あえて不満を述べるなら、光るタイミングのおかげでアルセウスのころの方が取りこぼしが少ないように感じたが……。

 

 オープンワールドになったことでよりポケモンが面白くなった。

 DLCや次回作にも大きな期待を抱きつつ、ここで筆を置く。