new さぶかるメインで

復活! サブカルをメインに批評・考察・提案するブログです。

俺妹に見る異世界構造

ネタばれ注意!


俺の妹がこんなに可愛いわけがない」は、なんだかんだでずっと発売日前後に買っている、とても好きな作品です。前があるのか。
それはともかく、今回、第一巻を読み直しましたので、批評をします。


やっぱり、最近の一般的なラノベと比べると、文章がかなり良いですね。
もちろんライトではあるのですが、だからといって手を抜いたように見えないつくりで、統一感がありますし、こだわりが伺えます。


物語としては、妹と不仲になっているお兄さんが主人公。
ひょんなことから、妹の「オタク趣味」という秘密を知ってしまって、それを隠しつつ趣味を理解していく。
そしてオタク趣味の友達を、SNSを通して見つけてあげる。
これで結構妹は満たされるわけですが、しかしそこへ厳格なお父さんがエロゲを発見してしまってあわやピンチ。
お兄さんは体と誇りを捨てて妹のエロゲと思いを守る。というところで一巻は終わりです。


お兄さんから見ると、妹と積極的に関わる生活が異世界にあたります。
ライナスの毛布(=異世界へ行っても大丈夫になるお守りのようなもの)は拾ってしまった「妹と恋しよっ!」であり、また、妹のお兄さんを求めている心です。こうしてみると、とても象徴的ですね。
一見、お兄さんはとてもかっこよく妹のために奔走しています。


でもこれ、お兄さんと妹が不仲にさえならなければ、最初の時点でお兄さんが逃げなければ、オタク趣味も発生しないで、悪くてもブラコン・シスコンの共存関係でいられたのだと思います。サブカルが好きになったとしても、今のような依存状態にはならなかったはずです。
どうみても、過去から抱えている何がしかの負債を、今になって返済している姿なんですよね。
本来日常であるはずの妹が異世界になる、という時点で、お兄さんは、正常ではありません。
一巻で着地したのは現状維持で、過去に何かあったとしたらその解決を先送りにしているだけ、と言うこともできます。
しかし、悪意ある行動を取ってしまったとかではなくて、きっと不幸なすれ違いみたいなものでしょう。だから、一巻での行動は別に情けないわけではない。
もしあそこでオタク趣味が粉砕されたら、妹の心はひとたまりもなかったでしょう。
逃避先がなくなったからといって、人は良い方向に立ち直るとは限らないのです。グレたかもしれないし、寂しさを埋めるために援交してしまうかもしれない。どんなに良くても家族との絶交程度でしょうか。妹はモデルとして食っていけるので、今度こそ家族を見限ってどこかへ行くでしょう。かつて妹エロゲ趣味へ逃避したように。
……あやせと同棲して依存しちゃうとか。


どういう事情で不仲になったのか、今のところ表面上の理由しかわかりませんし、ひょっとするとそれが全部なのかもしれません。
それならあっさり問題は解決するのですが、どうも、そうでなさそうな伏線もあります。


なんとも複雑な状態ですが、それには「長編のプロットを組んだとしても売れなければ最後まで出せないから」「途中で打ち切られても作品として完結できる状態で出版しよう」という裏があるのかなあ……と勘ぐってしまいます。
電撃文庫のシステムは私には類推するくらいしかできませんが、ちょうど三巻を過ぎたくらいのころから「次の巻に続く」要素が強くなっているように思えるからです。


私としては、一冊ずつの独立性がそこそこ高めで、一冊ずつ楽しめるつくりのほうがうれしいのですが……
やっぱり、思うように作品を発表できない縛りというのはつらいし、しかしそれに助けられることもあるのですね。だからこそ発展した部分もある。


専用アンケートはがきなど、挑戦的なことをするシリーズなので、ひょっとするとエロゲみたいに分岐があるかもしれないとまで思います。
7巻が二冊あるとか。7A巻と7B巻とか。作品中で「これは現実だ、戻ることはできない」というような描写が何度もあるのでそれはないとしても、外伝で別エンドをかかれることくらいならあるかもしれません。
それでも欲しいと思うほど、丁寧で、魅力的な作品です。


予想できるエンドはいくつかあります。
私の願望としては、お兄さんには、社会的な男の成長(性行為ではないもの)を、しないなら妹と、するなら幼馴染とくっついて欲しいなあ、と思います。
非日常にこのまま踏み出して、獲得するなら妹。日常を選び取るなら幼馴染。そんな感じですね。
主人公は、放っておいても幼馴染とくっつきそうですが、そうではなくて成長した上で日常を選ぶ、というのが社会的な成長だと思うのです。
今の時点では、幼馴染が逃避先に見えるので。
妹さんとは、兄妹として仲がよくても十分幸せになれるはずですからね。


だがっ!
最新刊のラストは、そんなことはゆるさなかったッ!(ドン!)
あの付き合って発言もいろいろ思うところ、想像できるところ、考察はあるのですが――的中するとまずい! ので、これ以上は黙っておきます!
(私はコネとかはないですが、もし、予想くらい自由にしなさいとか、そんなお墨付きがでたら思う存分書くと思います)←逆書評を期待している
いずれにしろ、あれは重要なターニングポイントであり、日常の破壊です。
そしてゆくゆくは、本人たちの殻をも粉砕するでしょう。


俺妹の未来に期待を込めて。
ひゃっほーーう! きりりんちゃん可愛いよ! 可愛いよ! マwジwキwリwノww


……たまに勘違いしそうになるんですが、キリノって名前なんですよね。苗字ではなくて。
その辺もお兄さんと妹の距離感の表れなのかなあ……