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復活! サブカルをメインに批評・考察・提案するブログです。

Twitterリレー小説に見る「ゲーム的リアリズム」

Twitterで、深見真先生発のリレー小説が行われていました。
まだ全部読めていないのですが、眺めた感じでは、ねずみ算的に分岐・拡大していく構造をとっているようにみえます。
こちらがまとめサイトのようです。http://togetter.com/li/35196
執筆された先生方とまとめてくださった方々に、心から感謝します。おかげで、大変面白くすばらしい企画を追い、目にすることができました。


最初は一人の作家さんが、140文字以内でツイート(書き込み)し、始まったリレーですが、これの続きを誰が呟いても(書いても)良い状況になったのです。
その書かれた続きに対しても、誰が続きを書いても良い。構造としては無限に分岐できます。
つまり、作品の世界としては、平行世界が分岐の数だけある、つまり増えていく限りは無限にあると考えることができます。


これは、東浩紀さんの言う「ゲーム的リアリズム」に適合する要素を持っているのではないかと考えます。
東さんは、ゲーム的リアリズムを、大雑把に言うと次のように定義しています。
1、ゲームでは何度死んでもやり直せる。
2、これはループ世界である。
3、そういったループ構造を持つ作品を、ゲーム的リアリズムを持つ作品と呼べる。
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーが先駆的な作品で、美少女ゲームで言うならCROSS CHANNELなどがそうといえます。
ゲーム的リアリズムについて詳しくは、東浩紀さんの著書をお読みください)


今回のリレー小説の場合、一つ一つ分岐を読んでいく作業が、結果としてはそういったループ物の作品と同じ形態になるといえます。
しかし、前述のような、ひとつの作品として監修されたものとは決定的に違う点があります。それは、あまりにも自由で、収拾をつけることが大変難しいことです。誰かが管理しているわけではないからです。
つまり、芸術品として、ループから抜け出すことに意味を持たせる、などといったような、メッセージ性や面白さを持たせることは大変困難だということです。


しかし、よほどふざけた分岐が作られない限りは、ある程度分岐ごとにちゃんとお話にはなっているでしょう。
全体にひとつのテーマを持たせるのではなく、多様なテーマがあること事態に意味を持たせられるような書き出しさえ作れば、ひとつの作品群として、ゲーム的リアリズムに合致した作品にすることは可能かもしれません。
この形ならば、ポストモダン以降の小さな物語群にも合致しますし、それなりにいい企画になるかもしれません。


では、この企画をもっと練っていくことにしましょう。
練るといっても、あまり多くのことはできません。縛りが強すぎると、多様な作品群としての強みを失ってしまうからです。
そこで、作品作りの根幹に近い部分だけを決めてしまうことにします。こうすると、根幹自体はいくらでも想像していいことになります。
その根幹に近いものとは、シナリオで言えばモチーフのことです。これはテーマを描く際の材料といえます。
テーマを決めずにモチーフだけを決めることによって、多様性を維持するのです。
そうですね、まず「○○を使って、何かを伝える物語になるようにしてください」というルールはどうでしょうか。
この「何か」というのが、テーマになります。一番大事な部分は決めないわけです。
こういう言い方をすれば、結末の数だけ、それぞれのテーマによる多様性が現れるのではないでしょうか。


○○に当てはめるものは、メッセージ性が強くないほうがいいですね。
たとえば「○○=スカート」でしたら、制服から学校を想像する方がいるかもしれませんが、一方では女装をイメージする方もいますし、あるいは縫製工場を出す方がいるかもしれません。
最初の書き込みは、どうとでも取れるように、個性をあまりださずに、人がスカートを見つめていたとでも、思わせぶりに描けばいいような気がします。
しかしここで「○○=一夏の恋」などとやってしまうと、みんながみんなそこそこ似たような味の話を書いてしまいます。シチュエーションはそれなりに広がりますが、具体的な条件のついた恋といわれてしまうと、テーマやオチのイメージが似通ってしまうからです。
これでは多様性が生まれにくく、どちらかというとつまらないわけです。


いい感じのモチーフを決めて、リレーを始めて、それが一冊の本になる……までは行かなくとも、PDFにして電子書籍にするなどすれば、配布も容易ですし、しっかりした形でみんなの手に渡って、面白いかもしれませんね。


私個人の考えとしては、そういう、小さな物語群が完成した後で、参加者が互いに批評をしあい、議論を重ね、中身のある大きな物語をそれぞれが手にする、という状況が理想なわけですが……議論前提の参加者募集となると、どれくらい人が集まるんでしょうね。
これはちょっと難しい。
いい面を見れば、やる気のある人ばかりが集まってくれるかもしれませんが、そもそも、大々的に宣伝をしないと人が来ないかもしれません。条件が厳しくなるので……
でも、大学か何かの授業でやる分にはいい企画なのかもしれません。大学に通ったことはありませんが、そういう場でなら議論前提でもよさそうな気はします。むしろウェルカム?
……それ、私自身がやってみたい。ものすごく勉強になりそう。
どうでしょう、もし興味のある方がいらっしゃいましたら、コメントに書いてもらえませんでしょうか。
まだやるとは決まっていませんが、参考までに……お願いいたします。


今回の記事はこれで結びとさせていただきます。
最後までお読みいただき、感謝いたします。ありがとうございました。