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復活! サブカルをメインに批評・考察・提案するブログです。

けいおんを成長物語として考察する

 ネタバレ注意!



けいおん! の番外編。
二つあるうちの、「冬の日!」を覚えていますか?
私は最初見たとき、何でこんなに暗い話なのか? と思い、批判しようかと思っていたほどです。
ですが二期が始まり、ここにきて、実はあれは二期の縮図ではないのかと思うようになりました。


澪は海まで旅をして、紬はアルバイトという冒険をします。
律は悩み、梓は猫の世話をして、唯と憂は日常にいます。


唯の鍋パーティという今までのような日常は、みんなが別々の場所にいるため成立できません。
律はラブレターをもらったと勘違いして髪形を変えようとするなど、自己のあり方に悩んでいます。
紬はアルバイトがうまく行きかけたものの、些細な失敗をしてしまいます。
澪は詩の発想を得るために海まで行くものの、たいした成果は無いまま帰ってきます。
梓は預かった子猫と打ち解けるものの、子猫の嘔吐にまともに対応ができず、唯たちに助けを求めます。毛玉をはいていただけで特に問題はなかったようですが……
そして、一同は再び集まります。
律の恋は勘違いでしたし、紬のミスはそこまで責められるようなことではありません。
5人は日常に戻りました。


これは「行きて帰りし物語」という、成長物語の王道をそれぞれに割り振ったのではないかな、と考えられます。
簡単に説明すると、「主人公は決意して冒険や旅に出て、その中で成長し、故郷へ帰ってきて新たな日常を築く」というものが、成長物語です。
絵に描いたような旅をしても良いですし、社会経験などの抽象的な冒険でも良いわけです。
しかしこの「冬の日!」では、成長に必要な経験を五人それぞれに割り振ってしまっているので、成長物語のような成長、つまり「大人になる」という成長はできません。
5人はほとんど元のまま、新たな、しかし対して変わらない日常へ戻り、個々の成長は先送りされます。
そして5人はそのまま年越しライブで、一組の集団として活躍するのです。


けいおん!! では序盤から未来への不安が演出されています。
修学旅行などの「おわり」を暗示するようなエピソードと共に、梓以外の後輩がいないことや、進路など、先を示すエピソードが展開されています。
一期ではめったに無かった、唯と同じような格好(髪を下ろすなど)をする憂も頻繁に表現されています。唯が憂に依存するのは見てわかるように互いに責任があるのですが、そこから一歩ずつ踏み出す可能性もあります。


二期の尺でどこまで描かれるかはわかりませんが、自立へと向かう姿を描かれることが予想されます。
集団で始まったけいおん部は、一人一人が大人として自立することで、さらに素晴らしい集団へ生まれ変わることができます。ただし卒業をしてしまうので、部活動としての集団ではいられません。学校を超えた領域での新たなバンドとして再結成して「新たな日常」とするのか、それともバンドではない道を歩く姿を「新たな日常」とするのか、はたまた全然別のものか、先の展開はまだ未知数ですが、個人的には一つ目だと見ていてなんだかうれしいですね。
逆に言えば、現在は個々において依存しあっている状態です。後輩がいない責任は梓にもあります。唯たちが情けない様子ばかりが目に付きますが、梓は割りと本気で今の状態に肩まで浸っていると思われます。特に唯に対しては半分後輩のようなものなので、その分かえって満たされてしまっているから危機感が薄れているのかもしれません。


ここまで成長物語の枠で捉えてきましたが、けいおんはコンセプトの一つとして「ゆるさ」があるので、大胆な変化をするとは考えにくく、むしろゆるやかにのんびりと平和的に成長させて、最後にはいつの間にか皆が答えを見つけているのかもしれません。
さわ子先生の過去が描かれたのも、今後の展開の示唆のような気がします。子供らしさを残してはいるが先生として自立しています。
緩やかに大人へ成長したらああなってもおかしくはありません。
ゆるさを余裕として残したまま大人へ成長する。ある意味理想的かもしれません。


とはいえ、原作が、少なくとも単行本ではそこまで行っていませんので、もし前述のような成長を描くとしたらアニメオリジナル展開となります。
ですので、大人になるところまで描くとしたら、三期や四期に続くほうが現実的かもしれません。卒業で二期は終わるんじゃないかなあとも考えられますが、現状ではちょっと読めませんね。


彼女たちの成長を見守りつつ、けいおん二期を楽しんで行きたいと思います。


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